パニック障害

 下記のパニック発作が頻発する状態。発作は通常20〜30分続くが、1時間以上続くことはほとんどない。発作がないときにも、また発作が起こるのではないかという「予期不安」を感じることがある。

パニック発作:次の(1)〜(13)のうち4項目以上に当てはまる場合を言います。
1)息切れ(息を吸ってもすっても足りない感じ))
2)息苦しさ(窒息感)
3)めまい感、気が遠くなる感じ、頭が軽くなる感じ、ふらふらする感じ
4)動悸(胸がどきどきする感じ)、頻脈(脈が速くなる))
5)発汗
6)吐き気または腹部の不快感(腹痛、おなかがごろごろする感じなど)
7)身震いまたは震え
8)胸痛または胸部の不快感(胸がざわざわする、締め付けられる感じ、圧迫感等)
9)現実じゃない感じ、自分が自分じゃない感じ
10)コントロールを失うことに対する恐怖、または気が狂うことに対する恐怖
11)死ぬことに対する恐怖
12)異常感覚(しびれる感じ、うずく感じ))
13)身体の冷え、またはのぼせ
       米国精神医学会編「精神疾患の診断・統計マニュアル 第4版」より改変

 パニック発作が特定の状況、場所に関連して誘発され、その状況、場所を避けようとしている場合を「広場恐怖」と言います。
生涯のうちに発病する可能性は、パニック障害では100人に5人程度、パニック発作も同程度と報告されている。また診断基準を満たさないパニック発作は100人に2,3人とされています。女性は男性の数倍罹りやすいようです。20台半ばに罹り易いといわれているが、全年齢で発病します。

病因
.生物学的要因:関連すると考えられている神経伝達物質は、ノルエピネフリンセロトニン、GABAなどである。セロトニン系機能障害はかなり明白です。
 遺伝的要因:研究は少ないが、現在のところ遺伝的要素を持っているといえます。

経過・予後
聴器の追跡調査研究が少ないので明確にはいえないが、パニック障害は一般に慢性的な経過をとります。30〜40%の人は長期間無症状であることがあり、50%の人では症状が軽度で生活がひどく妨げられることはなかった。そして10〜20%では著明に症状が改善した。

自殺の危険性
 パニック障害の40〜80%でうつ病が臨床症状を複雑にし、自殺率は増加します。

治療の概要
.●薬物療法アルプラゾラムパロキセチンFDA(米国食品医薬局)によって認可されパニック障害治療薬。SSRIのすべてはパニック障害に有効。
(1)SSRI:パロキセチンは鎮静効果をもち、即時に症状を落ち着かせる傾向があります。例えばパロキセチン1日20mgというような治療用量に達すると鎮静効果が増強する。パニック障害の治療手順として、1日5〜10mgのパロキセチンを1〜2週間投与し、それから1〜2週ごとに最高60mgまで1日10mgずつ増量してゆく。もし鎮静作用に耐え切れなくなったら、1日量10mgまで減量し、1日量10mgのフルオキセチンと入れ替えてゆっくり増量。
(2)ベンゾジアゼピン系薬物:パニックに対して最も速効性があり、しばしば最初の週のうちに効果が現れ、抗パニック効果への耐性を増大させることなく長期間使用できる。アルプラゾラムはもっとも広く用いられている。ロラゼパムにも同等の効果があることが示され、クロナゼパムも有効とされる。セロトニン系薬物(SSRI)を治療的用量までゆっくりと増量してゆく間に、ベンゾジアゼピン系薬物を併用してゆくことは理にかなっています。服用している間は運転など危険な操作をしない様に教えるべきである。
(3)三環系および四環系薬物:三環系薬物の中で最も有効なのはクロミプラミンとイミプラミン。十分な効果を得るためには十分な量が必要で、その量に達するには8〜12週間かかる。ほかの薬物は効果が少ない。三環系薬物は一般に、パニック障害に有効とされる高用量では我慢しがたい副作用に襲われるので、SSRIほど広く使われていない。
●.認知および行動療法
 認知および行動療法はパニック障害の治療に有効である。薬物療法と併用した場合、どちらか一方の治療より有効である。
(1)認知療法:重要な2つの焦点は、パニック発作についての患者さんの誤った信念と知識に対して指導を行うこと。些細な身体感覚をパニック発作、破滅、あるいは死の切迫と誤って解釈する傾向に当てて指導する。知識としては、パニック発作が起こったとしても、時間がたてば発作は消滅し生命にはかかわらないことを説明する。
(2)その他:リラクセーションを応用し、くつろいだ状況を想像することで、パニック発作をやり過ごす助けとなるような技法を学ばせる。
  パニック発作に伴う過呼吸は、おそらくめまい、失神などいくつかの症状に関連していると考えられる。それゆえ、パニック発作を制御することには、患者さんに過呼吸への強い衝動性を制御されることが、直接の解決法となる。
  実験的曝露法は、以前パニック障害の基本的行動療法として用いられていた。恐怖の対象になっている刺激を徐々に強め、暴露させ、脱感作されるのを期待する方法である。