心意気

 近々、理事会があって、その場で私の子どもの精神科専門外来の開設が決定する。
 ところで、最近のこの分野のトピックは、注意欠陥多動性障害発達障害なのだそうだ。多くの子どもクリニックや専門外来にあふれているという。それはいい。が、初診予約が数ヶ月待ちという話をよく聞く。....そんなんありか?。と言うのが正直な感想である。他にも急を要する疾患があるでしょ?、と考える。どうしてるんだろう???。そんな些細な疑問符が浮かんでしまう。不登校になったばかりの子や、急な恐怖心に襲われて家族共々訳がわからなくなっている子や、突然、厳しいダイエットを始めたらしい娘さんを抱える親御さんとか。そんな子どもたちを受け入れることができなくなっていいのか?、と考え込んでしまう。そういう子はどうすればいいの?、と考え込んでしまう。
 というわけで、私の外来は、一切、予約なしでスタートしようと思っています。どれだけ混乱した状況になるかは想像がつきますが、それでも予約なしです。気分としては、小児精神科の三次救急を引き受ける気分。緊急対応を要するお子さんをみな、引き受けようかと。逆に言えば、他の医療機関にお願いできるものは、みな、お願いしてしまおうという魂胆です。
 というのも、大人の外来って、割と多いんですよね、すぐ受診できる医療機関が。そこで初期治療を受けて、場合によってはもっと適切な医療機関を紹介されてお別れすることもある。でも子どもはそうじゃない。それはおかしい。小児科でも身近な医療機関はみな、すぐに利用できる。だから安心して相談できるってとこ、あるじゃないですか。ああいう感じを目指してるんです。それは逆に言うと、他の医療機関で対応できる子どもを切り捨てるっていうことになります。これは気分としては本当に心苦しい。これまで精神科医と言いつつ、内科小児科何でもござれで看板を上げていた私には、この切り捨ては痛いです。自称一人総合病院男だった私としては、希望としてはすべて診たい。でも話に聞くと、今、子どもの精神科医療機関の大部分を占めている疾患は、残念ながら多大な時間を割かないと適切な対応ができないようです。最初の方で書いたように、そうすると急を要する疾患に対応できない。もちろん、これは私の側の力量不足もあります。もしかしたらいずれ、すべての疾患に対応できるようになるかもしれない、いや、なりたい。
 そんな心意気で始めようと思っています。