精神科医の資格問題について思う

 今学会で、正式に承認される精神科専門医制度について、多々疑問が残る。
 まずは、学会が認定する資格であると言うこと。学会というのは特定の利益を追う団体であるのは言うまでもないが、その団体が発行する資格に何の意義があろうか。これは例えば、ある会社が発行している資格と同等で、世間的に認められるものではないことは言うまでもない。
 また、その資格取得には一定のレポートの提出と口頭試問があるが、これも問題である。何故なら、精神科には治療者の主観が入り込む余地があり、そこが精神療法につながる糸口にもなるのだが、こういった資格取得手順を踏むことで、試験対策が講じられ(すでに他の学会認定医ではその傾向がある。が、身体疾患は主観を排除したところでも十分に成り立つので構わない)、精神科医の資質にかかわらず、よく言えば均一の、悪く言えば画一的な治療者を生み出す。これは他科でよく言われる、ロボットのような医者を生産することに他ならず、時代の求める医師増と乖離することになる。
 さらに、その資格更新のためにはどういう作業が行われるかというと、これは一般には知られていないと思うが、出席点を稼ぐことである。たとえば総会は100点、地方会は20点という具合である。これは一見、勉強に励めばそれだけで点数が加算されるかと思えるが、出席だけすればよいのである。出席だけ確認されれば、あとは野となれ山となれ。ご存じかもしれないが、学会案内にはつきものの観光案内パンフレット。ろくに発表も聞かずに出席だけ取ってあとはどこかへお出かけ、なんていうのは学生時代だけではないのである。こんな方式の資格更新に意味があるだろうか。
 もっと問題なのは、認定医は医師の技量の向上が目的、と謳っていても、結局は学会の収入源であることを忘れてはいけない。資格申請に数万円、受験料が数万円、認定量が数万円。数年おきにこれだけの出費をする側は、勢い儲けなければならない。余分な出費を得るために、儲け主義の医療に走らないとも限らない....ちょっと過激な意見だが。
 世にはびこっている医学系の認定医はすべてこんなものである。

 本当に患者のためになる資格は、生まれるのであろうか?